ヘアモコモコ生活

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果物と夫

私の夫は果物がよくとれる県の出身なので、夫もしくは夫の実家などから果物をいただく機会がある。買うと高いしとてもありがたい。

ただ果物というのは不思議なもので、家にあるとなぜかあまり食べない。何故か。それは果物は値段が高いことなんかよりも、賞味期限の短さと、皮むきの面倒さ、そして欲しいだけの量を食べるのが難しく食べ切れない、という3つの欠陥を抱えた存在であるからではないかと思う。

 

果物はすぐ傷む。しかも食べごろが難しい。何回か桃を買ったことがあるが、すべて硬くて美味しくないorやや熟れすぎのどちらかであった。そして大体の果物は皮を剥くのが微妙に難しい。さらに苦労して剥いたとしても、4口くらい食べると飽きてしまう。

果物の皮を積極的に剥ける人間がいるとするならば、まず食べごろを目利きできるだけの勘と経験を備え、剥いた後自分だけで食べるのではない=何人か家族がいるような人だろうから、要するに実家の母ということになろう。果物は自分で剥くものではなく、母が剥いて冷蔵庫で冷やしておいてくれたのを勝手に取り出して食べるものなのだと思う。

 

果物について以上のような考えを持っているので、私は同居する人間からお土産として受け取る果物について、むやみにありがたいという意思表示をしないようにしている。
客観的に見てもそれが相当に失礼な態度であることは承知なのだが、果物をお土産として家に持ち込んでもらった時、金銭面は負担してくれているからとてもありがたいとしても、その果物の皮を誰が剥く想定か?切ると意外と量が多くて日持ちしないが、主に誰が食べるのか?という問いからは逃れられず、その辺りの責任主体が自分の可能性を思うと安易にはありがたがれないのである。

 

1度夫の両親が何かの折に果物を送ってくれたことがあり、その時夫が「この果物は地元の名産で良い物だから是非食べて」といった趣旨の言葉をかけてくれたのだが、私はここで「夫の両親が送ってきたのだから、食べる時期を見極め、皮を剥き、悪くなる前に計画的に消費していく責任の主体は私より夫であるべきな気がするのに、その苦労をナチュラルに回避しながら送り主である両親に同調することで贈る側(=感謝される側)にさりげなく立つ高度なムーブをかまされている!」と反射的に思考を飛躍させてしまい、強く反発をした。冷静に考えると、果物をリコメンドしただけで過剰に反発された夫はかなり不憫と言える。

 

ここで何かを取り返すために夫を褒めるが、夫はさきほど私が深夜まで残業をする姿を哀れに思ってか「コンビニ行くけど何か欲しいものはないか?」と6回くらい聞きに来た。特になかったのでスルーしたが、夫はこのように私をいたわる途方もないやさしさを持っている人で、お土産や差し入れを買って身近な人間の喜ぶ顔を見るのが好きという、とても素晴らしい人間である。愛情もある。素晴らしい。もしもう1段階素晴らしくなる余地がまだあるのであれば、今冷蔵庫にある先日夫が持ち帰ってきた桃も、責任主体として率先して皮を剥いてもらえたら嬉しい。愛も深まると思う。