ヘアモコモコ生活

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ダンスをやりたい

大学生の中盤あたりから、ダンスをやりたいと思っている。
高校生の頃床に落ちていたバスケットボールを拾っただけで突き指 してしまったことがあるほど運動神経がない(そして体も弱い)のだが、体を動かすこと自体は嫌いではない。心肺機能が弱いのと筋肉量が少ないので、ランニングや筋トレにはあまり面白みを感じられず、さらに勝ち負けに興味がないためにバスケットボールだのバレーボールだの体育の授業で扱われる種目には総じて興味が持てなかっただけだ。体を動かすこと自体はとても好きなのである。

そのため周りのダンスをやっている人たちがのびのび体を動かしている姿を見る内に、楽しく体を動かす習慣を持っていることが単純に羨ましく、私もダンスをやってみたいと思うようになった。しかしダンスはまだ始めていない。

 

昨年1度だけダンススクールの体験に行ったことがあるのだが、その時も結局入会には至らなかった。かなり良心的な価格設定で、割と理想的な時間に自分の受けたいダンスのクラスを開講してくれているスクールだったので、ここで入会に結び付けられなかったことがある種の挫折経験となり、ダンスを始めるという夢それ自体が頓挫した。ならば今からでもこのスクールに入会すればいいのだが、それはあまり気が進まない。これは体験に行くまで全然わからなかったことなのだが、ダンススクールという場所の居心地は思った以上に悪く、とても通い続ける自信が持てないのである。

 

そもそも、私のまともな運動経験と言えば勉強ばっかりしている子が通っている女子校(つまり大半が運動にやる気がない)の穏やかな体育の授業くらいだったので、運動=若者に囲まれて楽しくマイペースに行うものというイメージがあった。 しかしダンススクールにおいて、大人向けの初級クラスの生徒と言えば主に中年女性になる。

さらにそもそもの話になるが、大抵の人は全力で運動をする中年女性というものをあまり見たことがないのではないだろうか?だいたい人が全力を出して運動する機会は、基本的には学生時代の体育の授業と部活くらいなもので、大人が全力で運動をする姿というのは日常生活ではあまり目にしない。 見れるとするとスポーツジムくらいだろう。
ただスポーツジムとダンススクールがちょっと違うのは、ダンスは単なる運動ではなく自己表現という要素が入ってくるので、 その全力に「鬼気」と言わざるを得ないエモーショナルな圧力が加わってくるところだ。アマチュアの中年女性が全力でダンスを通して自己表現している様子というのは、率直に言って結構怖い。若さを失っても活力は失わず、まだまだ私にもやれることがあると言わんばかりの迫力に圧倒される。言うてもまだ20代の私にそのような迫力はまだ身についておらず、 体験レッスンは完全に気圧されて終わった。ジャズダンス(バレエ の動きを取り入れる系)という比較的優雅な種目でもこれなのだから、社交ダンスやHIPHOPなどの熱いクラスだったらどうなっていたのか恐ろしい。

またダンススクールというのは当然中級・上級クラスも開講されているわけだが、今度そちらのクラスはイケてる感じの若者で溢れかえっている。私のような運動神経の悪い人間は、学生時代に体を自由自在に動かして楽しそうにしている奴ら(教室で踊ったりしていたダンス部・ミュージカル部的な人たちを指す)に対しとてつもない劣等感を抱えて生きてきたわけなので、イケてるダンサー的な人を見ると「ここにいてはいけない」という気分になってとにかく苦しくなる。自分の存在が脅かされる感じがする。そんなんなので、教室の外で次のクラスを待つダンサー集団を直視できなかったし、更衣室で着替えるのも苦痛だった。何なら受付の時点でツラかった。そして初級クラスにいた中年女性たちはこういう変な劣等感を抱かないからこそダンス初心者でもダンススクールに通えている=ある程度自信があってメンタルも安定している「陽」の人間なのだと確信し、ここは私のいる場所ではないと改めて悟り入会手続きを放棄して逃げるように帰宅した。

 

以上のような挫折経験によりここ1年ほどはダンスを始めること自体を諦めていたが、1年の時を経て傷も癒え、最近またダンスの体験に行こうかと画策中だ。前回の経験を踏まえ、①自己表現よりまずは型を習うところから始められて②優雅な雰囲気で③せめてイケてる若手ダンサーと接触しなくて済む、という3点の理由から、次はジャズダンスでなくバレエにしようかなと思っている。なお主な生徒が中年女性であることは妥協する。あと10年もすれば私も立派 にそちら側の人間だからだ。今からバレエを始めれば、10年後には鬼気迫る表現力を身に着けた中年バレエダンサーになることも夢ではなかろう。